Unbalance + Automatic ※ and I love you

2004年~2007年 29歳~32歳の情念ノート

「オワリノ夏」


7月をとうに過ぎ、もはや夏の終わりを迎えようとするイマ。


「それ」は来ない。 


そして、もう・・・夢が終わる。


夢は例えばこんな言葉だった。


「人類の滅亡」「地球の破滅」「ハルマゲドン」。


滅亡や破滅なんてことが、あたかも一つの大きなイベントによって一瞬にして起こるような、そんなふうに思い描いたこと自体は一つの間違い。


この夢を視ていたのは僕だけではない。貴方方の心の中にそれはたしかに、きっと、あったはず。


「だからみんな死んでしまえばいいのに」というコトバは「THE END OF EVANGELION」という映画のコピーフレーズ。同時期に「もののけ姫」は「生きろ」と叫んでいた。むなしいすれちがい。二つの映画の結末は同じものであったにも関わらず。

「AKIRA」「幻魔大戦」「ゾンビ」「帝都物語」。そして「TWIN PEAKS」。魅力ある終末作品たち。
壮大なカタストロフ、或いは静かで美しく醜悪な寂しい終わり。
そんな夢を、僕達は共通に視ていたから。


※怪獣という存在に僕達が強く惹かれた理由を考えたことがあるだろうか。彼らは異形であり、社会のアウトサイダー。破壊の衝動、それは自己存在の確認。それが為し得ずば彼らは空漠たる闇に呑みこまれるのみ。つまり怪獣とは僕達の或部分の形代。あるいは僕達自身。



ヨハネをはじめとし、多くの神秘家たちは言っていた。
「その時、全ての罪が裁かれ、選ばれし者のみが残るだろう」


僕は全ての罪が裁かれる時、選別の時、生き残ろうとは思わなかった。何故ならもう、この血の中に罪の烙印はしっかりとなされているから。
貴方達はどうだろう。僕と同様でない人がいるだろうか。そのような聖人はどうぞ御勝手に生き延びていただきたいものである。
僕達はもう生きる必要はなかった。清らかな新しい世に生きようと思ってはいなかった。
ただ無へと還るその時のみを待ち望んでいたというのに。


その時が現実に近づくにつれ夢を夢だと気づきはじめた人はこんな事を言う。


「世界に終わりなど無いのだ」(「EDEN」雑誌掲載時扉文)


現実にはそのとおりであろう。


たとえ大規模なカタストロフ・・・大災害やバイオハザードがあろうとも、ヒトは生き延びてしまうだろう。ゴキブリの如く。


そしてヒトの罪と業は永遠に繰り返される。



そんなことを、僕は望まないのに。




 でも、もう終わる。
 夢が終わる。
 終わりの夢が終わる。



これから僕達は新しい世紀を、おぞましい忌まわしい時代を生きていかなくてはいけないらしい。


信じられるだろうか。


 
夢からまだぬけられない・・・。



 
1999年夏、結晶した刻。永遠に終わりの夢を見続ける刻。









※わしは清教徒じゃないけど、千年王国というのはもう来ているんじゃないのかね」などと湯島定一に話しかけることもある。「千年王国と騒ぐほどのたいしたものじゃなくて、実は現在のような極く極く詰まらない微温湯的なものに過ぎなかったんじゃないの」「ははあ。するとつまり第二次世界大戦が差詰めハルマゲドンであったと」「うん。そしてまあ、わしの考えではその、千年王国と終末が重なっているんじゃないか。一時期終末論がもて囃されたが、本来終末なんてものは一瞬にして訪れるのではなくてだね、矢っ張りその人類の歴史に相応しい長さで延々と続くんだと思う。派手な、壮大な人類の破滅なんかじゃなくて微温湯的な世界の中での、なんとはなしの苦しみが、丁度千年くらい延延と続くんだ」「どちらも虚構でしょう」「その通り。だからこそわしはこの考えに執着してしまうんだな。馬鹿げた新興宗教の千年王国論と馬鹿げた終末論が、重なってこの現代の殆ど同時期に出来したというその事実にだよ。虚構の自乗は現実だからね」
(筒井康隆「敵」)


※凡そ人間の滅びるのは、地球の薄皮が破れて空から火が降るのでもなければ、大海が押被さるのでもない、飛騨の国の樹林が蛭になるのが最初で、しまいに皆血と泥の中に黒い蟲が泳ぐ、其れが代がはりの世の中であろうと、ぼんやり。
(泉鏡花「高野聖」)


※破局に対する願望はエロスとタナトスという問題にも絡んでくるけども、それは特定の世代に特徴的なことではないと僕は思うけどね。それが現代においてこういう形であらわれたということはあるが。
(康芳夫)


※すなわち、ハルマゲドンはこの一千年続くという確信をもてたのだ(びっくりした?)
(平井和正)


※もしかするとこんな私たちは未来など望んでいないのだ。
はかなくもろく淡く薄いものに心を奪われながら、月の女神の神殿の巫女たちの列に連なり、ただ美しく崩れ去りこぼれ散っていくこの惑星を見たいのかもしれない。
うっとりと。
(榛野なな恵)






※僕たちは、まぎれもないハルマゲドンの時代をぼんやりとまったりと生きていて、それは僕たちが死ぬまでずっと続いて死んでもずっとつづくんだ。
夢をみよう。美しい夢を。絶望と裏腹に、夢はきっともっと美しく深くなる。